スイミングゴーグルのVIEW

関野 義秀 / フィンスイミング
かつては「道具(フィン)を使うなんてせこい」とさえ思っていた... 衝撃の日本記録樹立から、競技を牽引するリーダーになるまで。

2026年7月28日

日本のフィンスイミング界の黎明期から競技の発展を支え、長年トップ選手として活躍してきた関野義秀さん。日本記録樹立やアジア選手権優勝、世界選手権ファイナリストなど数々の実績を残し、現在は「選手」「指導者」「起業家」という3つの立場から、競技の普及と市場の拡大に取り組んでいます。
競泳からフィンスイミングへ転向した経緯やトップ選手として歩んできた道のり、そして競技の未来に懸ける想いとは――。
今回は、関野さんのこれまでの歩みと、これから描くビジョンについて伺いました。

自分では気づけなかった眠っていた才能

飛び込み時の関野氏

飛び込み時の関野氏(一番手前・ピンクの水着)

ーー 水泳を始めたきっかけは?

僕は2歳から親にスイミング教室に入れられて、ベビースイミングから始めたので、気づいた頃にはもうプールの中にいたという感じでした。逆に泳げなかった頃の記憶というのがありません。

ーー ご両親が水泳をやられていたんですか?

いえ、両親はまったく水泳をやっていませんでした。僕自身、喘息(ぜんそく)があったから、体力向上のために通わされたみたいです。母は元々テニスをやっていたんですけど、スイミング教室のコーチに「お母さんもどうですか」とそそのかされて母も泳ぐことになり、そしたらなぜか母の方がハマっちゃって。僕が小学校2年生の頃には、仲間と一緒にドーバー海峡横断に挑戦していました(笑)。

ーー それはパワフルなお母様ですね!

選手としてバリバリ泳ぎに行くというよりは、あくまで「仲間と一緒に」という形でしたけど、パワフルですよね。そんな環境の中で、僕が通っていたスイミングスクールには珍しく「フィンクラス」というのがあったんです。全国的にも本当に珍しいんですけど、昔から日本代表選手を何人も輩出しているようなところで。僕ら競泳の選手クラスが練習する前の時間に、いつもフィンの人たちが練習していたんです。でも当時は、「あんな道具つけやがって、せこいな」みたいな、ちょっと下に見るような偏見を持っていました。「生身の体で泳げよ」って。

ーー 最初はかなり偏見があったんですね

正直、毛嫌いしていましたね(笑)。でも転機は高校3年生の大学受験の頃でした。自分の競泳の成績がそこまで突出していなくて、推薦で大学に行けるレベルでもなかった。その時にコーチから「お前、練習でフィン使うとき速いから、フィンスイミングやってみれば?」と勧められたんです。

単純ですが「 じゃあ、やってみます」と。高校3年生の5月、日本選手権がデビュー戦となったのですが、そこでたまたま400mビーフィン(※左右の足に1 枚ずつ装着するフィン)の日本新記録を樹立してしまったんです。もちろん当時は今より競技人口も少なかったですし、発展途上だったということもありますが、それでも「えっ?」という感じでした。

その勢いのままアジア選手権200mビーフィンでは、アジア新記録で優勝。この年は国際ルールの改正により、ビーフィン種目が正式種目として採用された初めての年だったこともあり、結果的に初代アジアチャンピオンとなりました。そこからはもう完全に“沼”にハマってしまいましたね。

ーー すごい!フィンスイムとの相性がバッチリ合ったんですね!
ちなみに、競泳選手が練習でフィンを使用することは珍しくないんですか?

はい、珍しいことではないと思います。筋肉トレーニングの一環として行うこともありますし、素足じゃ絶対に出せないスピードを自分で出せるので、レースの時よりもさらに速いスピードの「水感覚」を体感できるんです。そうすると水の抵抗がものすごく大きくなるので、それに対応するための姿勢作りとか、ボディポジションの意識が格段に高まる。競泳を伸ばすためにも、フィンはすごくいいツールなんですよ。

高校生の頃からずっとVIEWの【Bladeシリーズ】一択

数々のレースをともに戦ってきた愛用のゴーグル

数々のレースをともに戦ってきた愛用のゴーグル

ーー ゴーグルを選ぶ時の基準などはありますか?

昔はまず「カラー」で選んでいましたね。高校生の頃は「赤」を好んで使っていたんですが、赤って強い色じゃないですか。ある時、試合前に気持ちが昂揚しすぎちゃって。興奮して力んだり、気持ちが焦ったりして失敗したことがあったんです。そこからは逆に「落ち着くには青がいい」という話を聞いて、以降はずっと「青」系を使うようになりました。


ーー 関野さんはずっとVIEW をご愛用いただいているそうですが、出会いを教えてください

高校生の頃、店頭で初めて【Blade】(※VIEW のノンクッション レーシングゴーグル) を見た時に「ゴーグルの形が変わった!」という革命的な衝撃を受けました。最初は「なんか不思議な形だし、新しいから使ってみよう」という好奇心から手に取ったのですが、実際に使用してみると、その薄さと軽さにおどろき、後からスペックの良さに気付かされました。流水抵抗を極限まで減らすために計算された形状を体感してからは、Bladeシリーズ一択です。

ーー フィンスイミングでは、クッション付きを好む方も多い印象です

僕が代表を務めているチーム(AQUA FinD)に所属する子でも、安定したフィッティングを重視してクッション付きを好む子は多いです。僕も一時期、クッション付きの【Blade ORCA】というモデルを使っていたこともありますが、結局はノンクッションの「薄さ」と「軽さ」に戻ってきましたね。着けている感じが一番自然というか、何も邪魔しない感覚が一番なんです。

あとこれは個人的な理由なんですが、僕は昔から肌が弱くて。ゴム付きのクッションだと、練習のたびに目の周りがカサカサに荒れていたんですよ。小学生の頃はいつも薬を塗ってから泳いでいました。でもノンクッションに変えてからはそれが全くなくなった。そういう背景もあって、機能面でも自分の体質的にも、ノンクッションしかないなと思っています。

ーー 現在は【Blade F】を使用していると伺いました

そうですね。当初は【Blade】を使用していたのですが、カーブレンズの新モデル【Blade F】が登場してからはそちらを使うようになり、視野がめちゃくちゃ広くなったのを実感しました。フィンスイミングは基本的にストリームライン(※水の抵抗を最小限にする一直線の姿勢)を組んで泳ぐので、頭を動かして壁を確認することができないんです。とくに浅いプール だと壁が見えづらくて、視野が狭いとターンの距離感を詰めすぎて失敗してしまう。でもこの広い視野のおかげで、壁との距離がすごく掴みやすくなり、個人的にはいまのところコレがベストです。

ーー フィンスイミングは競泳に比べてスピードが速い分、瞬時の判断力も重要になるんですね

そうなんです。僕は得意な距離が中距離なのでターンの回数も多い。ターン際で周りの選手とどれだけ差をつけられるかが勝負のポイントでもあるので、この広い視界には助けられました。元々ターンは個人的に苦手意識があったのですが、【Blade F】にゴーグルを変えてからは、むしろターンで差をつけられるほど、大きな武器になりました。

関野 義秀氏 VIEWゴーグル使用遍歴

ーー こするだけでくもり止めが復活する「SWIPE ANTI FOG(スワイプアンチフォグ)」機能はいかがですか?

これはもう、本当に助かってます。指でレンズを直接こするとゴーグル寿命が縮むことは経験から知っていたので、昔はゴーグルがくもると、みんな「ペロッ」と舐めて対処するのが当たり前だったんです(笑)。もしくは、曇り止め液を持っていくんですけど、すぐ無くしてしまうし、目に染みて痛かったりもする。でもスワイプが搭載されてからは、これまで御法度だった「指でこする」という行為で、くもり止めが復活し、それからは舐める機会が一切なくなりました(笑)。はじめて使った時は「これ、裸眼よりもキレイに見えるんじゃないか?」と思うくらい、解像度が上がった感覚があって、本当にびっくりしました。


フィンスイミングの魅力を次世代へ繋いでいきたい

指導風景

指導風景。タイムを測りながら撮影し、その場でフィードバックを行う

ーー 現在の活動について教えてください

現在は自分がバリバリ現役選手としてやるというよりは、どちらかというと後進の育成や指導の方がメインになっています。とくにジュニアの日本代表選手の強化に携わっていたり、自分自身でもチームの代表を務めているので、そこに所属する子たちがより活躍できるようにしていきたいです。そうすることで日本のフィンスイミング人口を増やし、競技力全体の向上につなげられるように、今はそうした活動に重きを置いています。

また、フィンスイミングというのはどうしても道具を使う競技なので、道具がないと何も始まらないんです。でも、僕が選手として第一線で活動していた当時は、その道具はほとんど日本では売っていなくて、自分で手に入れること自体がすごく難しかった。そういう環境が整っていない限り、どれだけ普及活動をしても意味がないと思い、2021 年にフィンスイミング用品を購入することができるオンラインショップを立ち上げ、「Fin-D 合同会社」という会社を作って、そちらの事業も並行して行っています。

関野さんインタビュー画像

世界中のトップスイマーが愛用するフィンブランド【rocketfin[ロケットフィン]】

現在は、CMAS の認証(※CMAS= 世界水中連盟 / 公式大会での使用に必要な認証)を受けたフィンの主要メーカーの代理店も務めているので、日本でフィンスイミングを本格的に始めたいと思った子が、必要な道具をすぐに揃え、競技に挑戦できる環境をようやく整えることができたと感じています。

日本初のフィンスイミング専門ショップ
「Fin-D Online -ファインドオンライン-」

https://shop.fin-d.co.jp

ーー 今後のフィンスイミング界をどのようなものにしていきたいですか

フィンスイミングという競技の価値そのものを高めていきたいです。競泳だけが水泳じゃない。フィンを使うことでより速く泳げる喜びを知って、それによっていろんな人と繋がったり、人生が豊かになったり、何かしらの活力になってくれたらいいなと思っています。

ーー これまでの活動を通して、見えてきた課題はありますか?

約10年前、TBS『炎の体育会TV』の企画でフィンスイミングが取り上げられた際には、私も指導者として携わらせていただきましたが、フィンスイミング界にとって、それまでにないほど大きなインパクトがあったと感じています。ただ当時は、世間に興味を持ってもらえても、いざ「どこでできるんですか?」と聞かれた時に、「今すぐ体験できる場所がないんです」と答えるしかありませんでした。どれだけ普及させようと努力しても、受け皿(※コーチや環境)がないので、結局パンクして次に繋がらない。それが自分自身への大きな反省でした。

だから今は、ただ広めるだけじゃなく、指導者を育成したり、道具を誰もが手に入れられる仕組みを作ったり、練習できる場所をしっかり確保する。そうやって「受け皿」をしっかりと作る、土台を固める活動にシフトしています。

ーー 最後に、これからフィンスイミングを始める方にメッセージをお願いします

フィンスイミングの魅力は、なんといってもスピードです。一度泳げるようになれば、競泳とはまた異なる新しい世界が待っています。自分の持っている泳力をさらに引き出してくれる。僕自身がそうだったように、競泳でなかなかタイムが出なくて悩んでいる子でも、フィンを履くことでチャンスが広がるかもしれません。日本には「一つのことを続ける美学」が根強く、他のことに挑戦するとネガティブな印象を持たれることも少なくありません。でも、ときには少し横を向いて違う世界を覗いてみたり、並行して新しいことにチャレンジしてみたりすることも大切だと思います。そんな自由な選択肢を、周りの大人が子どもたちに与えてあげてほしいですね。

関野氏が代表を務めるフィンスイミングチーム【AQUA FinD [アクアファインド]】

関野氏が代表を務めるフィンスイミングチーム【AQUA FinD [アクアファインド]】


選手としての実績はもちろん、競技を取り巻く環境づくりにも情熱を注ぐ関野さん。今後もフィンスイミングの未来を見据えた活動に注目です。関野さんの活動については、AQUA FinD 公式ホームページ・SNS・note などでも発信されています。ぜひあわせてご覧ください。

関野氏画像
プロフィール
関野 義秀(せきの よしひで)
■ 生年月日:1990年1月4日
■ 出身:神奈川県平塚市
■ 所属:AQUA FinD (代表)
■ 主な実績
2007年 フィンスイミング アジア選手権
200m ビーフィン優勝(アジア新記録)
2014・2015年 フィンスイミング 日本選手権
男子最優秀選手賞(2年連続)
2017年~ フィンスイミング ジュニア日本代表監督
2018年 フィンスイミング 世界選手権 4×200m
サーフィスリレー ファイナリスト
2021年 東京2020 パラリンピック
水泳日本代表コーチ
AQUA FinD 公式ホームページ
https://www.aquafind-finswim.com