DOUBLE FIT 開発秘話

昨年度、タバタお客様相談室へのスイミングゴーグル・パーツ関連の紛失に関する問い合わせのうち、フェイスパッドの紛失は47.8%と半数近くを占めていた。特にシリコーン製のフェイスパッドは、耐久性やフィッティングに優れている反面、他の素材と比べて外れやすいという問題があった。
開発・設計を担う安部は、この問題を解決するべく研究を始めた。

フェイスパッドが外れにくいゴーグルを作れ!

フィッティングを高めるには素材を柔らかくしなければならないが、柔らかくし過ぎると簡単にレンズから外れてしまう。硬くし過ぎると、取れにくくなるがフィッティングがダメになる。 この問題を解決するには、レンズを覆う部分には、比較的硬い素材、顔に直接触れる部分には柔らかい素材という二つの硬度の違う素材を使わなければならない。

柔らかい素材と硬い素材を合体させるには接着剤を使うという手もあったが、眼に近く、人体に影響が少なからずあることを考えると接着剤は使えない。仮に使ったとしても、作業効率が悪く、大幅なコストアップになってしまう。どのようにくっつければ良いのか?くっつきやすく、成形しやすい形状は?安部は、過去に開発に携わった商品を眺めていた。 その時、フットケア用品で挑戦した2種類の異なった硬さのシリコーン素材の製造技術が応用できるのではという考えが浮かんだ。

試行錯誤の末、安部はスイミングゴーグルでも2種類の異なった硬さのシリコーン素材で作ることが可能で、この製法が現時点では最善だという答えを導き出した。 この技術を活かせるなら、より多くの人の顔に合うゴーグルを作ることができるのではないか?と安部は考えた。 安部の新たな挑戦が始まった。

「できない」、「できない」、「できるようになったが、コストが高い」

柔・硬のシリコーン素材を合体させる。柔らかい素材と硬い素材を単純に混ぜ合わせることは簡単である。 しかし、ピッタリと決まった位置で柔硬の素材を分離させるのは非常に技術を要する。「できない」、「できない」、「できるようになったが、コストが高い」これの繰り返しであった。通常のゴーグルの開発期間は1年であるが、この“ダブルフィット”は、2年の期間を要した。コストに見合った成形方法、営業からのコスト要求、ハードルは高い。既存のゴーグルより高い価格にすることはできない。

フェイスパッドに腰を持たせる

試作1号機は、吸い付きが強過ぎ、眼が飛び出すような感覚であった。たしかにこれで多くの人の顔に適合するようになったが、快適さとはかけ離れてしまった。 顔に当たる部分に腰のない柔らかな素材を使えば、より多くの人にフィットさせることができる。しかし、柔らかすぎるとレンズの硬さが伝わり痛みを感じてしまう。 また圧迫感が強くなり過ぎ、眼球が飛び出すような感覚になってしまう。この不必要なまでの吸い付きをどうすればいいのか?素材を硬くすれば、フィッティングが台無しになる。

ある寒い日の夜、途方にくれて自宅に帰った安部は、妻が作ってくれた力うどんを食べながらゴーグルのことを考えていた。餅は腰がなくもっちりしている、しかし讃岐うどんは腰がありその触感が食欲をかきたててくれる。「讃岐うどんは、もっちりではなく、腰がある」「フェイスパッドにも腰があるとどうなるのか?」
安部は、フェイスパッドに腰を持たせるとどうなるのかというアイデアがひらめいた。

今までと違うフィット感の誕生

ストラップを引っ張り過ぎるとフェイスパッドの目尻側(外側)のカタチが他の部分より崩れてしまうことに安部は着目した。目尻の部分は、変形させる必要がない。この部分に腰を持たせれば装着時の圧迫感は解消できるはず。

安部の考えは正しかった。
フェイスパッドの目尻側に腰を持たせること(リブ構造)により、不必要な変形を防ぐことに成功した。

これにより圧迫感が少なく装着でき、目もひきつった状態にならず長時間の使用でも快適に水泳を楽しむことができる。 こうして、顔の形に併せてフィットするだけでなく、「吸着しないのにフィットする」という不思議な今までとは違うフィット感のゴーグルが誕生した。 この新しいフィット感をぜひ体験してほしい。