スイミングゴーグルのVIEW

SHINARI 開発秘話


競泳スイマー、マスターズスイマーへ向けて

個人の能力に応じて年齢別に競技を楽しむマスターズ水泳は、熟年層を中心にその参加者は増加傾向にある。斬新なデザインの競泳用ゴーグル「Blade(ブレード)」を手がけた深澤は、今回、マスターズスイマーが自己の記録更新を狙うための手助けになるゴーグルを作ることに狙いを定めた。

マスターズスイマーが、求めるものは?

マスターズスイマーが求めるスイミングゴーグルとは、どのような機能が必要になるのだろうか? 深澤のモノづくりは「ユーザーの視点になって考える」ことから始まる。いままでに蓄積されてきたアンケート結果を再度読みなおし、ターゲットの問題点を抽出していく。

さらに、マスターズ大会に足を運び、コアターゲットとなる団塊世代の選手を中心にアンケートを行い、それらの意見をまとめていく。そしてその結論は、深澤が考えていたこととほぼ一致し、求められている機能がより鮮明に浮かび上がってきた。
「飛び込んでもはずれない」、「長時間使っても痛くならない」「顔の形に合っている」 つまり、「つけ心地が良くて、抵抗の少ないゴーグル」が求められていると結論づけた。 しかし、その要望を形にするとき、様々な問題点が生じることは、容易に想像できた。 「これは新たな技術の導入が必要だ!」

ゴーグルが顔の一部になる

フィット感を高めるためには、フェイスパッドは必須だ。単純にフェイスパッドをつけるだけでは水の抵抗が増してしまう。『競泳用ゴーグル』としての機能も実現するためには、やはりゴーグルの構造自体を見直す必要があった。

フェイスパッドをつけると、レンズとの間に厚みができ、無駄な水流が生まれてしまう。この問題を解消するため、深澤は、多くの試作品を作った。 その結果、装着時にフェイスパッドとレンズの隙間を埋めるクッション構造を作り出した。これは、水の流れがスムーズになり、飛び込みやターン時に起こりやすいゴーグルの外れを防ぐことにもつながる。

さらに、深澤が取り入れたものは、顔の形状に併せてレンズとバックルの間がしなる「しなり構造」だった。レンズとバックルの接続部分に柔らかい素材を使用することでしなり、包み込むようなフィッティングを実現した。 このような独特の構造を持つゴーグルを実際に形にするには、従来とは異なる製造方法も必要だった。まずレンズとバックルを作り、そこにフェイスパッドの素材を流し込む。 この方法により、機能性の高いデザインを施すことが可能になった。また、一体化することにより水漏れの原因となるフェイスパッドの外れをなくした。

SHINARIは、僕たちも使いたいゴーグルだ。

取材前に資料を読んだときは、「自分たち用(20代後半のフィットネススイマー)のゴーグルではないな」と思っていたが、実際に手に取り装着してみると、取材班一同「カッコいい!それにすごくフィッティングがいい。これは、むしろ自分たちが使いたい」という話になった。 深澤も「とくに熟年層専用というわけではなく、広い世代に使っていただきたいですね。レース等に出場されている方でも、その練習用としては最適だと思います。」と、より多くの人たちの使用を期待する。